「息子に導かれた絵本作家の道」エッセイが掲載されました

某機関誌のエッセイコーナーに、絵本作家になった経緯をつづらせていただきました。紙面1ページ(800字ほど)の短いお話しですが、コロナ禍で息子に「新しいお話を考えて」と言われた当時の様子や、いま制作にかける自分の想いも、改めてかみしめて整理する良い機会をいただき、ありがとうございました。
息子に導かれた絵本作家の道
コロナ禍で図書館が閉まり、寝る前の読み聞かせに新しい絵本を用意できなかった晩のことでした。当時五歳の息子が「新しいお話がないなら、いますぐ考えて」と言い出したのです。
最初はつっぱねましたが、しつこいので「カンガルーの赤ちゃんは、生まれたらすぐにお母さんのお腹をよじ登って、自分でポケットに入るんだって」と、豆知識から話題をしぼり出しました。「それから?」「おしまい」「だめ!続きを教えて」「…それで、もし途中で落っこちちゃったら、どうなるんだろうね」「どうなるの?」「知らない」「早く!」こんなやりとりをしながら、私はしぶしぶ即興で、笑いあり、困難あり、友情ありの展開をつないでいきました。お話しが終わった時、息子は一言「いいお話しだったね」と言ってスーっと眠りに落ちました。
そのときの気持ちは何とも言えません。閉塞感のある時期だったこともあり、何か未知の扉が開けたような、尊さを感じた瞬間でした。
翌日、私は忘れないようにそのお話を書き留めて、コンテストに応募してみようと思い立ちました。幾度もの推敲とチャレンジの末、「思いやり」をテーマにしたカンガルーのお話が出来上がり、某絵本コンテストの佳作に入選。その経験が小さな自信になりました。以前から創作は大好きでしたので、その後もお話を作ってはあちこちへ応募を続け、その中の一つが最優秀賞を受賞。小部数ながら令和五年(2023年)の秋、拙著『ビーバーとどろぼうのすてきなひろいもの』を出版しました。大金を拾ったビーバーと、それを取り戻しに来た泥棒との交流を軸にした絵本です。「お金は他人から奪うものではなく、”ありがとう”の印として回っていてほしい」という願いを込めています。
絵本は、私の「願い」の形です。私と息子が絵本で親子時間を紡いだように、私の作品が誰かの「かけがえのないひと時」になることを夢見て、息子と共に制作を続けています。


